Gesanmedo ――Tibetan Highlands Elementary School Construction Fund NPO

 

・ロツバ(珞巴)族 ・

 ロッパ族はメンバ族と同様に、チベット南部ヒマラヤ山脈地域の国境をまたぐインドのシッキム東部などの地域に集中して居住する民族である。ロッパ族とメンバ族は互いに隣接して居住しており、おもに中国・インド国境の東部マクラホマニブイン以南のインド側に居住している。中国領内のロッパ族は、1990年の統計によると、わずか2322人で、中国少数民族中最少である。塔楡地区北部の米林、墨脱、察隅などの辺境県内に分散して居住している。

 チベット語でこの一帯をロユというが、「ロッパ族の住む地区」という意味である。なおロッパとはチベット側からの他称で「南方に住む人」という意味を持つ。ロッパ族の言語形態は非常に複雑である。チベット・ビルマ語群に属しているが、チベット語系に属するか否かについては、専門家たちの見解は一致していない。本書では、ひとまずチベット語系に入れることとする。

 ロッパ族は、古くからの下位集団を継承して、その生活単位としている。中国領内のロッパ族の人口は希少であり、各地区に分散して居住し、チベット族やメンバ族と雑居している人々もいる。インド領内のロッパ族は、現在まで統一的な社会組織を形成していない。主要居住地区は高山峡谷地帯で、そこは山脈や河川に遮断されてチンツァンいるため、各集団問の関係は薄い。そのため、青蔵高原に居住する遊牧民のなかでも遊牧性が最も強く、幻あるいはさすらいの民と呼ばれてきた。

 ロッパ族はいくつもの集団に分かれており、その数は非常に多く、各集団はそれぞれ異なる名称や方言を持っている。たとえば、ボガアル語、邦波語、博日語、凌波語、巴連語、崩尼語、民栄語、義都語などはすべて各集団の方言である。これらの言語は、あるものは一つの方言群に属し、互いに会話が可能であるが、いくつかの言語は差異が大きいので、交流ができない。現在またこれらの言語については、全面的な系統の分析研究が進んでいないため、今日まで方言の種類と分布の確定が困難となっている。

 またロッパ族は、固有の文字を持たない。半世紀前まで、木を削り(木刻)紐を結ぶ(緒縄)記述方法を採用し、それを使って情報を伝える媒体役とした。そのため、ロッパ族の若者たちは、チベット語や漢語、およびその他の文化科学的な知識を学ぶことを近年ようやく開始したばかりである。これまで、ロッパ族社会は基本的に半閉鎖状態にあった。国境をともにする他の民族との関係も薄く、社会内部の様子を知っている人は少なかった。生業形態は、おもに狩猟と採集である。農業は焼畑で、簡単な木製耕具を使って穴を掘り種を植える。しかし、農作物の収穫だけでは生活を維持するには足りず、そのため、狩猟活動がロッパ族の食糧を得る手段となっており、ロッパ族の男性は全員狩猟にたけた優秀な狩人である。ふだんでも矢や斧を肌身から離さない。頭には熊革の帽子を被り、獣革の服を着て、堂々とした体格をしている。

 ロッパ族は、チベット仏教(ラマ教)を信仰せず、万物に霊魂が宿ると信じている。祈薦師は最も高い社会的地位を持ち、病や災難の場合、人々は祈藤師に占いを頼み、生費を殺し悪鬼を払ってもらう。だが現在、中国領内のロッパ族が、もともと持っていた生業形態や古来の文化や風習は、根本から変化があらわれはじめた。すなわち、他の民族の協力によって、現代文明社会へと歩き出している。〔索〕

 『中国少数民族事典』(東京堂出版 2001年)

写真は「中国西藏 林芝」五洲伝播出版社による


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――――BBC世界の屋根探険会 烏里 烏沙 制作・2003年3月8日――――